まとめ

松下特許のヘルプ機能は

  1. ヘルプアイコンを指定する
  2. 続けて機能を知りたいアイコンを指定する
  3. 適切な説明が表示される。

MacTechのContext Sensitive Helpは

  1. メニューまたはキーコンビネーションでヘルプ機能を選択
  2. 続けて機能を知りたいアイコンを指定する
  3. 適切な説明が表示される。

2つの相違点はヘルプ機能実行の最初のステップだけである。
しかし同じMacTechの記事にはHelp機能の実行には、メニュー、キーコンビネーション、ボタンからの実行があることに触れてあり、なおかつHyperCardの記事においてIconを有するHelpボタンのクリックによって、機能説明を表示する方法に関しての記述が認められる。
このHyperCardの記事に現れるボタンは「絵又は絵文字として表示して,コマンドを処理するもの」という先の判決で出された「アイコン」概念に該当するものである。

したがって松下の特許は

  1. Iconを有するHelpボタン
  2. Context Sensitive Help

という1987年には公知になっていた技術の組み合わせから容易に想到しうるものであり、新規性がないか少なくとも進歩性に欠けているため、その特許は無効である可能性が高い‥‥‥‥‥と思うんですけどどうでしょうね。
いずれにしてもこういう「わずかに手順を変えた」類いのUI特許は規模の小さいソフトウェア開発者には大きな負担となり、本来の創造性を奪うという意味において非常に有害だと思います。
ですから法的な正当性や権利主張にのみ議論の焦点を置くのではなく、広く日本のソフトウェア技術のレベルアップが望めるような議論が深まることを希望します。

付録:
http://www.jpo.go.jp/iken/pdf/tt1210-038_2.pdf
第VIII部 特定技術分野の審査基準 第1章 コンピュータ・ソフトウエア関連発明
のp.19より

3. 進歩性
3.1 基本的な考え方
(5) なお、所定の目的を達成するためにある分野に利用されている方法、 手段等を組み合わせたり特定の分野に適用したりすることは、ソフトウエアの技術分野では普通に試みられていることである。したがって、 種々の分野に利用されている技術を組み合わせたり特定の分野に適用したりすることは当業者の通常の創作活動の範囲内のものであるから、 組み合わせや適用に技術的な困難性(技術的な阻害要因)がない場合には、特段の事情(顕著な技術的効果等)がない限り、進歩性は否定される。