囚われた女

エルエーの股間ファイヤーと全裸シャボン玉のインパクトが強すぎる。
盗聴しながらインカローズのペンダントをいじってただけのブルーアイズの「機を逸した」発言に「どんだけー」と多くの視聴者がツッコミを入れまくっただろう今回。
事実上のエルエー主役回とみて良いでしょう。
前回「守る男」のラスト近くのナディとエリスのラブラブっぷりに嫉妬感情の芽生えたエルエー。
(そういえば、このシーン、ForestのインストゥルメンタルがBGMだった。博士を失ったエリスが、今はナディと共にあって強い絆で結ばれていることを示す憎い演出。Forestはダメだ。涙が出る。)
何をしても気の晴れないエルエーは、警察を脅しナディとエリスを捕らえさせようとします。
エルエーの指示は、警官のオッサンの言うようにナディは殺しても可。
エリスのほうは、エルエーが手配書のDeadを塗りつぶしちゃってます。
警官のオッサンの配慮で命拾いしたナディですが、闇に乗じて助けに来たリカルドとの会話を盗み聴いたエルエーがまたもや逆上。
警察署内を悲惨な状況に変えた後、ナディの牢へ突入してしまいます。
弱く、支え合わなければ、生きていけない人間たち。
魔女の血を引くエルエーは、そんな人間たちを見下してきたわけで、人間たちに頼らず自分とエリスだけで十分だという考え方は、エルエーにとっては自然なモノではあります。
しかし、エルエーにとって、弱い人間たちはいつでも排除できる存在だったからこそ、これまでナディとエリスの旅路を余裕をぶっこいて眺めていたはずです。
エルエーの変化を感じ取ったナディはエルエーを挑発します。
「本当は怖かったんじゃないの?余計なコトしてエリスに嫌われたくなかった。そうでしょ、エルエー?」
しばしナディの言葉を吟味するエルエー。
エルエーにとってエリスと自分は魔女の血を引く世界に二つだけの存在。
その絆と運命を疑ったことなどなかったはずです。少なくとも、これまでは。
ナディの挑発を悪あがきと受け取ったのか、にやりと笑うエルエー。
しかし・・・
「人間らしいじゃない?」
ナディのこの言葉がエルエーの理性を奪います。
「怒ってるの?ますます人間らしいじゃない。」
なんという御前のナディの言葉責め。
エリスを独占したいと思う心の奥底に潜む人間的弱さをナディに看破され、エルエーが本気のワイヤーをナディに振り下ろした瞬間、エリスが飛び込んできてナディを間一髪助けます。
「ナディを傷つけたらゆるさない。」
「・・・あいつの正体を知ってもかい?」
エルエーにとっての最後の隠し球は、ナディがエリスの監視のために組織に雇われていたことをエリスの前でぶちまけること。
エリスの心の中に生じる小さな疑念の渦。エリスの呼吸が激しくなり、そして・・・。
なぜ、エルエーの股間がファイヤーなのかは置くとして、(置くのかよ)
エリスはナディを選びます。
ナディが何者であったとしても、エリスにとってナディは他の何ものにも代え難いのです。
そしてそのことを確認するための言葉などもはや必要ありません。
互いの名を呼び合い、そして、事情を説明しようとするナディの機先を制し抱きつくエリス。
どうしましょう、この百合カップル。
これまでもエリスにガチで拒否され続けてきたエルエーですが、今回のそれはこれまでと比較にならない傷をエルエーの心に刻んだようです。
なんとエリスは、そんなエルエーを気遣う様子を見せます。
成長しましたね、エリス。
しかし、最後のやりとりは、かなりアレです。
「もう、終わりにしよう、エルエー・・・」
動きの止まるエルエー。
「・・・こんなこと・・・。」
「・・・またね、エリス。」
どう見ても未練たらしいフられ男ですよ。
エリスがしていたように、シャボン玉を空へ飛ばすエルエー。(ただし素っ裸で。)
その頬を一筋の涙が伝います。
泣いているのですね。
ナディへの嫉妬と怒り。エリスを奪われることへの不安。
自分を受け入れてもらえない悲しさ。
これまで「変態」とちまたで呼ばれながらも、人間を超越した行動が人気となって、視聴者の喝采を浴びていた彼ですが、彼の行動は実のところ、ローゼンバーグに植え付けられたところの「心」、すなわち幼い全能感に支配されていたといっても良いのではないでしょうか?
そのエルエーが人間らしい弱さや感情を自らの中に発見した時、彼はようやく本当の彼自身の心を獲得するスタートラインに立つことになるのだと思うのです。
彼の成長は、ある種の視聴者に「つまらなくなった」と感じさせる危険性もはらんでいます。
今回のエピソードを評価できるかどうか、それはエルエーファンにとっての踏み絵であると同時に、視聴者にとってエル・カザドという物語を評価できるかどうかの分水嶺となるんじゃないか?
と、そんなことを感じました。
さてさて、
今回の謎は、ローゼンバーグとメリッサの意味深な会話。そしてローゼンバーグの元へ報告の電話を入れた人物。
ローゼンバーグとメリッサの会話を深読みすると、メリッサは元々魔女会議側がローゼンバーグ監視のために送り込んだエージェントで、今はローゼンバーグに協力する二重スパイという線がありそう。
そしてレギュラーメンバーに近い所に、メリッサの指示でローゼンバーグに協力する裏切り者の内通者がいそうです。
次回は「羽ばたく女」。
ブルーアイズがメインっぽいので個人的期待度大です。