逝く男

見終わった後、放心状態でしばらく感想を書く気がおきなかった。
予想していた事だったはずなのに、予想以上に悲しみが深かった。
さよなら、エルエー。
君は誰にも愛されずに逝った。
バイバイ、エルエー。
でも、ぼくらは君のことが好きだったよ。
(・・・キモいな、オレ。・゚・(ノД`)・゚・)

ローゼンバーグのネタばらしから始まった今回。
ローゼンバーグの取り出した拳銃は、例の装飾のある拳銃です。
早撃ちでダグに負けてるナディ・・・がんばれ。
気を失うエリスを尻目に、ローゼンバーグは話を続けます。
ナディたちの旅がローゼンバーグに仕組まれていたことなども、予想はしていたとはいえ、直接にローゼンバーグの口から語られるとなると、なかなかに残酷な現実ではあります。
エルエーは最初からローゼンバーグの操る単なる噛ませ犬でしかなく、ナディとエリスが旅の間、育んできた絆も、エリスのもつ魔女の力を覚醒させるための道具、そしてナディはそのための生贄に過ぎないのだ、とぬかすワケですから。
いい感じにローゼンバーグの悪玉レベルが上昇したところでリカルド登場。
「そこまでだ。」
リカルドの雇い主であったことを饒舌に話し始めるローゼンバーグ。
それを遮り、その契約がすでに破棄されたものであることを思い出させるリカルド。
「これは仕事じゃない。オレはこいつらを守ると決めた。」
リカルドの決断。もしかしたら、それはかなり以前の段階で、すでに行われていたのかもしれません。
「地獄で飲もうぜ、アミーゴ!」
やっちゃえ、リカルド!!
しかし、ナディはリカルドを制止します。
ローゼンバーグはハインツ・シュナイダー博士殺しの真実を知る唯一の人物。
ナディたちが手を出せないこともローゼンバーグには織り込み済みのようです。

エリスの髪の毛で作った人形に語りかけるエルエー。
彼の壊れてしまった心はお人形さん遊びでかろうじて保たれているようです。
そこへシャボン玉吹きながら現れたローゼンバーグ。
服も脱いだほうが素敵ですよ、ローゼンバーグ。
と、ツッコミ入れたかったよ!
シリアスなシーンのハズなのに、吹き出しそうになったじゃねーか、バカぁ!
殺意剥き出しのエルエーですが、ローゼンバーグの目力でコントロールされてしまいます。
抵抗できないエルエー。
「苦しむことはありません。エリスを想うその心も、所詮は私が与えたものに過ぎないのですから。」
「・・嘘だ・・僕は・・エリスを・・・愛している・・・。」
エルエーを抱き寄せるローゼンバーグ。
「その愛も、私が与えました。」
「・・う・・そ・・だ・・・。」
エルエーの頬を伝う涙。
エルエーは自身のよりどころであったエリスへの愛さえも、ローゼンバーグが与えた偽物の心だと知らされてしまいます。
「さあ、心を捨てなさい。」
エルエーの中に残る「心」。
それを、微かに残る蝋燭の炎のように吹き消したローゼンバーグの表情は実に邪悪です。

Bレディ達(かわいいよ、1号2号)によってもたらされた情報から、ローゼンバーグの目的は、魔女とマクスウェルの悪魔についての国家プロジェクトから外され失意のうちに自殺した父親の復讐ではないかというブルーアイズ。
今回初めて明かされたこの情報。
旧体制下のベルリンから亡命したローゼンバーグの父親の世代から、魔女を巡るプロジェクトが存在していた、ってのは何かの伏線だったりするのかな?
あの拳銃は父親のもの?

夕日の中、ローゼンバーグの晩餐の相手は、心をなくし、すっかりワイルドな風体に変わった操り人形エルエー。
ローゼンバーグはリカルドを消すように命じます。
Bレディ情報で、完全な操り人形となったエルエーが、リカルドに迫っていることを知らされると、リカルドは一人で決着をつけに行こうとします。
死をも覚悟し、リリオを頼む、というリカルドに対し、一人で行かせられない、というナディ。
「お前に、もしものことがあったら、誰がエリスを守るんだ?」
「でも、アンタ一人を危険な目にあわすなんて・・・」
ナディに向かって手を差し出すリカルド。
「金を出せ。」
「オレに仕事を依頼しろ。お前らのためじゃない。報酬のためだ。」
リカルドの優しさと覚悟を理解するナディ。
「がめついなぁ。・・・あ、イター、コレしか持ってない。」
と、言いながら放ってよこすコイン一枚。
「帰ってくるのよ。リリオが待ってるんだから。」
「ああ。」

そして、ついにリカルドとエルエーの再戦が始まります。
今回のエルエーはワイヤーだけではなく銃に手榴弾と装備十分。
一方、リカルドの姿が見えないことに気付いたリリオは、ナディたちのもとを抜け出してしまいます。そして銃声の方向へ走り出します。
エルエーの弾切れを待ち、狙い撃つリカルド。
それを変態アクションでかわすエルエー。
リカルドに蹴りを入れたその時、頭をかすめた銃弾のカケラに引きちぎられたバンダナから、エリスの髪の毛で作った人形がこぼれ落ちます。
エルエーに残されたエリスとのわずかな絆。
風に解けて消えていくその人形が、エルエーの心に記憶の断片を浮かび上がらせます。
「こ・・れ・・は・・・僕の・・僕の・・・大切な・・・もの」
「消えて・・いく・・・」
「・・違う・・これじゃない・・・本当に・・・大切なのは・・・」
あれは人工的な養育機の中で育てられている幼いエルエーとエリスでしょうか?
「心」を取り戻すエルエー。
「・・・エリスのところに行かなくちゃ・・・」
フラフラと歩いていくエルエーに、リカルドは狙いを定め・・・、
しかし、空へ向けて銃を撃ちます。
「エリスのもとには行かせない。」
リカルドは気付いたのですね。エルエーが「心」を取り戻したことに。
「・・・僕の邪魔をする奴は・・・殺す。」
「それでいい。」というリカルド。
エリスに執着する殺人鬼。
哀しいけれども、それがエルエーが辿り着くことのできた彼自身のオリジナルな「心」の有り様なのですね。
リカルドは、そんな「心」を取り戻したエルエーを、せめて、一対一、そしてワンチャンスのガチンコ勝負で送ってやりたい、と考えたのでしょうか。
拳銃に一発だけ銃弾をこめるリカルド。
息を吸い、ナディにもらったコインを投げあげます。
「そこかぁっ!!」
エルエーがワイヤーを振り下ろすその瞬間、背後を突くリカルド。
「地獄で飲もうぜ!アミーゴ!」
銃声。
そして、撃ち抜かれ、夜空を仰ぎ見るエルエーを、幼い日のエリスが覗き込みます。
「・・・ああ・・エリス・・・迎えに来てくれたんだね・・・」
エリスを求め宙をさまようエルエーの手を握りしめるエリスの幻。
「・・やっとわかったんだ・・・僕が君を好きになった・・ワケが・・・」
「・・・僕に心を与えたのは・・あの男じゃない・・・君だよ・・・」
「・・・あぁ・・・エリ・・・エリ・・ス・・・」
「・・君が・・僕の・・・すべてだ・・・」
エリスの幻、それはリカルドを追って現場にきたリリオです。
「・・あぁ・・眠くなってきた・・・エリス・・・エリス・・・」
「・・・僕に笑顔を見せて・・・君の微笑む顔が・・・見たい・・・」
哀しい彼の最期の瞬間に、リリオは微笑むことで、せめてもの慰めと安らぎを与えるのですね。
「・・・素敵だよ・・・僕の・・エ・・リ・・・」
そして逝くエルエーの魂。
誰にも愛されなかったエルエー。
幾多の人々を虫けらのごとく殺してきた殺人鬼である彼に、幸せな結末などあろうはずもなく。
それでも、エリスを愛するという自分自身の「心」が、本物であったことを知って逝けた事が、彼のただ一つの救いでしょうか。

ブルーアイズの報告を聞き、リリオとリカルドの無事、そしてエルエーの死を知るナディとエリス。
ナディはこの旅の決着を、エリスと二人だけでつけることを決断したようです。

次回は、「聖なる女」。
エルエー死亡の余韻から抜けきれず、鼻汁をすすり、涙目で次回予告を見直していたとき、アヤシイ仮面と衣装を身につけているのがネクタイしめたローゼンバーグである事に気付き、泣きながら爆笑の発作に突然襲われるというこの上ない苦悶の時を経験してしまった。
どうしてくれよう、ローゼンバーグ。
ナディが涙目で銃を撃っていたり、エリスが銃で撃ち抜かれていそうだったり、シリアス展開の最終局面ぽいというのに。